乳幼児期の栄養・食生活、
アレルギーについて
乳幼児期は成長や発達が著しく、生涯にわたる健康づくりの基盤となる重要な時期です。母乳、育児用ミルクを飲んでいる赤ちゃんの離乳の進め方については、成長や発達状況、日々の様子をみながら進めることが大切です。
また赤ちゃんが生活リズムを身につけ、食べる楽しさを体験していくことができるよう工夫していきましょう。
さらに、食物アレルギーなどのこどものアレルギーについて知り、生活の基礎作りを始めましょう。
乳幼児期の栄養・食生活
乳幼児期は、成長や発達が著しく、生涯にわたる健康づくりの基礎となる重要な時期です1)。家族や周囲の大人は、こどもの発育状況、日々の様子をみながら、こどもが必要なエネルギーや栄養素をとることができるようにすることが大切です。しかし、授乳や離乳、食事の場面では無理強いは禁物です。焦らず気長に、こどもが成長していく過程を楽しみましょう。
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1-1. 乳幼児期の栄養・
食事の重要性生まれてからの赤ちゃんの主なエネルギー源は母乳や育児用ミルクですが、5~6か月頃からは食べる練習を始めていきます2)。食物の形態は、液体から固形物へと徐々に変わり、食べる食品の種類や量が増えていきます。この食べる経験を通じて摂食機能を身に付けていきます。
この時期に形成された味覚や嗜好、さらに食習慣はその後の人生の健康にも影響を及ぼすと言われています。また、家族や他の人といっしょに食べることを楽しむ豊かな食の体験により、赤ちゃんは「食べたい」という意欲がわいてきます3)。健やかな心とからだの成長・発達のためにも、楽しい食事の雰囲気をつくり、規則正しく食事をする習慣を定着させることが大切です4)。
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1-2. 身体発育を確認しよう
こどもの成長・発達には個人差があります。特に、乳幼児期の身体発育は、出生時の体重や栄養法によって異なります。乳幼児期の身体発育については、お子さんの身長や体重の値を母子健康手帳に記載されている身体発育曲線のグラフに記入して、確認しましょう。
身体発育曲線の体重と身長のグラフの帯の中には、各月・年齢の94%のこどもの値が入ります。しかし、こどもの成長パターンは曲線に沿ったパターンや、早くから上回ったり、横切ったりするパターンなど、さまざまです5)。そのため、定期的に身長や体重を測定し、その値を記入して成長の過程を確認することが大切です。
お子さんの身長や体重の変化が曲線を横切ったり、体重の減少が見られた場合や、発育について気になることがあれば、かかりつけ医や乳幼児健診の際に相談しましょう。
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1-3. 授乳について
赤ちゃんの栄養は母乳が基本です。しかし、ママの体質や健康状態、仕事の都合などにより母乳を与えることが困難な場合は、育児用ミルクを活用しましょう2)。離乳食を始めた後は授乳のリズムに沿って、こどもが欲しがるままに母乳や育児用ミルクを与え、その後は離乳の進行状況に応じて与えますが2)、欲しがる回数や量は減っていきます。
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1-4. 離乳について
こどもが成長すると、母乳や育児用ミルクだけでは必要なエネルギーや栄養素が十分にとれないため、それらを補う必要があります。母乳や育児用ミルクから幼児食に移行する過程を離乳といい、この時にお子さんにあげる食事を離乳食といいます2)。
生後12〜18か月頃には形のある食物をかみつぶすことができるようになります。エネルギーや栄養素の大部分が母乳または育児用ミルク以外の食物から摂取できるようになったら離乳の完了です。
離乳の進め方については、後述の「2.離乳の進め方」をご覧ください。
離乳の完了といっても、母乳又は育児用ミルクを飲んでいない状態を意味するものではありません。母乳又は育児用ミルクは、こどもの離乳の進行や完了の状況に応じてあげるようにしましょう2)。
また、こどもが母乳や育児用ミルクを必要としなくなる時期は個人差があり、母乳や育児用ミルクを終了する時期を判断するのは難しいものです。こどもの成長や発達、離乳の状況やママのからだの状態から判断するとよいでしょう2)。
離乳期は食習慣や生活リズムが形づくられる時期です。こどもの状況に合わせて栄養バランスを考えながら離乳をすすめるとともに、生活リズムや健康的な食習慣を意識することが大切です。何よりも家族と共に食事をとり、食べることを楽しむ体験を重ねていくことを大事にしましょう。
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1-5. 幼児期の食生活
幼児期は食生活の基礎ができる時期です。
大切なことは、- 規則正しく食事をする習慣をつけること
- 間食は、量や栄養バランスに気を配ること
- 好き嫌いを少なくする工夫をすること
- 家族そろって楽しい食事の雰囲気をつくることです4)。
食事のリズムは、一日の生活リズムにも関係します。就寝時間が遅く、朝食を欠食してしまうことが続かないよう、生活のリズムを整えていきましょう。また、この頃は、味覚が発達して食べ方にむらが出る時期ですので、無理強いをせずに見守りましょう。そして、脂質や食塩の摂りすぎ、ジュースや菓子類の食べ過ぎに気を付け、間食の量や栄養バランスに気を配りましょう。
離乳の進め方
離乳はこどもの成長や発達のためだけでなく、「食べたい」という意欲を育み、豊かな食体験を広げる大切な役割があります。お子さんの成長や発達の状況に合わせて離乳を進めましょう。
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2-1. 離乳をはじめる前に
首のすわりがしっかりして寝返りができ、5秒以上座れる、スプーンなどを口に入れても舌で押し出すことが少なくなる、食べ物に興味を示してきたら離乳食を開始する目安です2),3)。生後5~6か月頃が適当です2),3)。
赤ちゃんの機嫌が良くて、時間にゆとりがあるときに離乳食を開始しましょう。赤ちゃんのペースに合わせて、あせらず、離乳は行きつ戻りつでも大丈夫です3)。 -
2-2. 離乳の進め方の目安
離乳食のすすめ方は大きく初期、中期、後期、完了期の4つの段階にわけられますが、各期によって、食品の種類や量が異なり、調理した食品の固さや大きさが変わります2)。
初期・中期は、歯の生え方や舌の動き、消化機能の発達に応じて、食べられるものを食べやすく調理したものを与えましょう。後期は、歯茎でつぶせる固さのものを用意し、手づかみ食べを働きかけるようにしましょう。完了期は手づかみ食べで、前歯を使って一口量を覚えていくようになります。うまくいかないのは当たり前ですので、赤ちゃんのペースに合わせて、気長に進めていきましょう。
詳しくはこちらをご参照ください。 -
2-3. 離乳を進める際に
気を付けること離乳食期には、赤ちゃんに生の肉・魚・卵やカフェインをあげるのは避けましょう3)。牛乳には鉄分が少ないため、飲料として牛乳を与える場合は、鉄欠乏性貧血の予防の観点から1歳を過ぎてからが望ましいとされています2)。
また、はちみつを1歳未満の赤ちゃんが食べると乳児ボツリヌス症を引き起こすリスクがあるため、1歳を過ぎるまでは与えないようにしましょう2)。
母乳育児の場合、生後6か月の時点でヘモグロビン濃度が低く、鉄欠乏を生じやすいとされています。また、ビタミンD欠乏の指摘もあります。母乳育児の赤ちゃんは、離乳の進行に応じて、大豆製品、魚類、肉類など鉄の多い食品や魚類、卵黄、きのこ類などビタミンDを多く含む食品を取り入れるようにしましょう2)。
離乳食は手作りしてもよいですが、パパやママの負担を軽減するためにベビーフードを使うのも一つの方法です。ベビーフードはこどもに与える前に一口食べて、味や硬さが適切かどうか確認しましょう。温めるときは熱くなり過ぎないように注意しましょう2)。
こどものアレルギーについて
離乳食を進めるに当たって、食物アレルギーが気になる方も少なくないでしょう。
私たちの体には、細菌・ウィルス・寄生虫などの異物などから、身を守るための「免疫」という仕組みが備わっています。この免疫の働きが、ライフサイクルの変化などによって異常を起こし、くしゃみ、発疹、呼吸困難などの症状を起こしてしまう状態がアレルギーです6)。こどもの代表的なアレルギー疾患には、食物アレルギー、アナフィラキシー、気管支ぜん息、アトピー性皮膚炎、アレルギー性結膜炎、アレルギー性鼻炎などがあります7)。ここでは食物アレルギーとアトピー性皮膚炎についてお話しします
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3-1. 食物アレルギー
食物アレルギーとは、特定の食物を摂取した後に過剰な免疫反応(アレルギー反応)により、皮膚や呼吸器、消化器あるいは体全体などに症状が現れるものです2)。具体的には、皮膚の発赤、じんま疹、かゆみなどの皮膚症状のほか、呼吸時にゼーゼーするぜん鳴などの呼吸器症状などがみられます。食物アレルギーを疑う症状があらわれた場合には、自己判断で対応せず、医師に指示を仰ぎましょう。
また、食物アレルギーによるアナフィラキシーとは、アレルギー反応により、じんま疹などの皮膚症状、腹痛や嘔吐などの消化器症状、息苦しさなどの呼吸器症状が複数同時かつ急激に出現した状態を指します7)。アナフィラキシーを起こす要因は様々ではありますが、乳幼児期に起こるアナフィラキシーは食物アレルギーに起因するものが多いです。アナフィラキシーを疑う症状があらわれた場合は、緊急の対応が必要となる可能性が高いため、すぐに救急車で医療機関を受診しましょう。
また、離乳食を進めていく中で、食物アレルギーが疑われる症状がみられた場合は、必ず医師の判断に基づいて進めることが必要です。
自己判断で食物の摂取を控えることはやめましょう。
また離乳食の開始や特定の食物の摂取開始を遅らせても、食物アレルギーの予防に効果があるという根拠はありません。生後5−6か月頃から開始しましょう2)。食物アレルギーの診断には問診が重要になります。「何歳ごろ、何を、どれくらい食べて、何分後に、どのような症状が出たのか」などの情報は、食物アレルギーの原因となる食物や食物アレルギーの重症度などを予測する際に有用ですので8)、母子健康手帳等に記録しておくとよいでしょう。
食物アレルギーと診断されているお子さんについては、基本的には原因食物以外の摂取を遅らせる必要はありません。食事の内容については、必ず医師の指示に基づいて行うようにしてください。
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3-2. アトピー性皮膚炎について
アトピー性皮膚炎とは、かゆみを伴う湿疹が良くなったり悪くなったりを繰り返す病気です9)。多くはアトピー素因を持ちます。アトピー素因とは、家族や本人がぜん息やアレルギー性鼻炎などのアレルギー疾患をもっており、アレルギーになりやすい素質のことです。
かつて、食物アレルギーによりアトピー性皮膚炎が発症すると考えられていましたが、近年では湿疹がありバリア機能が低下している皮膚から食物等が体内に入り込むことが、食物アレルギーを発症するリスク因子になると言われています10),11)。このことから、湿疹が長引く場合には、早い段階で医療機関を受診し、正しい治療をすすめながら、皮膚の状態を整えるケアが重要といえます12)。
【出典】
1) こども家庭庁 成育医療等の提供に関する施策の総合的な推進に関する基本的な方針の変更について (cfa.go.jp)2) こども家庭庁 授乳・離乳の支援ガイド
3) こども家庭庁 生後5か月からの「離乳スタートガイド」
4) 健やか親子21 妊娠・出産・子育て期の健康に関する情報サイト 母子健康情報支援サイト「乳幼児期の栄養」
5) こども家庭庁 乳幼児身体発育評価マニュアル 令和3年3月改訂 (平成23年度 厚生労働科学研究費補助金 (成育疾患克服等次世代育成基盤研究事業))
6) アレルギーについて | 国立成育医療研究センター
7) こども家庭庁 保育所におけるアレルギー対応ガイドライン(2019年改訂版)
8) 国立成育医療研究センター 食物アレルギー
9) 日本アレルギー学会・厚生労働省 アレルギーポータル アトピー性皮膚炎
10) 「日本小児アレルギー学会食物アレルギー委員会 食物アレルギー診療ガイドライン2021年ダイジェスト版」
11) 日本アレルギー学会 わかりやすいアレルギーの手引き2023年版(厚生労働省補助事業)
12) 国立成育医療研究センター アトピー性皮膚炎